コミック誌『週刊モーニング』に『イナンナ』の連載がはじまった。作者は岡野玲子氏。『陰陽師』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を取った人だ。「ご堪能あれ、女神が踊るベリーダンス!」と、見出しの文字が躍る。 ベリーダンスが男性コミックのテーマになるとは!時代の風を感じる連載である。
第一話は、天界の支配者イナンナが、地上に降り立つところからはじまった。彼女は、天の地位を捨て、身につけた霊力のすべてを捨てて不毛の大地に降り立つ。ひとりの生身の女性となったイナンナ。彼女は旋風(つむじかぜ)を身にまとう。地上のすべての病と苦悩を身にまとう。あらゆる病を味わったあと、彼女は目覚め、立ち上がり、そして舞を舞う。イナンナ舞いは、大地に豊穣をもたらす。病は癒え、苦悩は去り、人々は和解する。女神は歓喜のエネルギーで地上を満たし、再び天界へと帰ってゆく。
この物語は、スサノオの神話に似ている。スサノオもまた、天から地に遣わされたものである。イナンナの場合は自らの意思で、スサノオの場合は追放されて、というちがいはあるものの、両者はともに死と再生のドラマを演じる。スサノオは熊野でよみがえり、出雲地方を平定したあと、イナンナと同じく神々の世界に凱旋する。
今回『熊野古道ランドマークソング』の作曲にあたり、ぼくはなぜかベリーダンスのリズムを使いたいと思った。その理由を、自分でもうまく説明できないでいたが、『イナンナ』を読んでようやく腑に落ちた。ベリーダンスのリズムの中には、スサノオによく似た神が隠れていたのだ。親近感がわくはずである。
イナンナとスサノオは、コインの裏表かも知れない。いまや大地は傷つき、ぼくたちの魂は病み衰えている。イナンナやスサノオの姿を借りて、再生の神が地上に降り立つ日は近いはずだ。
photo=すさみ町見老津から望む黒島(c.nagase)
このページは、蛯乃木が2007年10月 3日 10:48に書いたブログ記事です。
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