奇妙な弁護人

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いま何がほしい?
と訊かれたら、すかさず「ソムリエバッチ」と答えるだろう。
あの金色の葡萄の房がほしくてたまらない。
手に入れたらうれしくてどこへ行くにもつけて行く。
毎晩パジャマにつけて眠るだろう。
だがしかし、これは簡単には手に入らない。


仕方がないので、いつも持ち歩くのはソムリエナイフである。
ビジネスバッグにしのばせている

これが空港で引っかかるのである。

あのベルトコンベアにくっついたレントゲンはたいしたものである。
どんなに巧妙に隠しても必ず検知してくれる。
警備員が恭しく、「あらためさせていただきます」
「どうぞ!」
刃渡り2センチのカッターを確認し、機内に持ち込めない旨を説明してくれる。取り上げられたナイフは、降りた空港の手荷物カウンターで受け取ることになる。やれやれ。

レコーディングが近づき、東京との往復の回数が増えた。
その都度検査で引っかかるのはうっとうしいから、この頃は自己申告する。
警備員は茶封筒にナイフをしまい、受取証をぼくにくれる。このくり返しだ。

ある日、この手続きに文句をつけた人がいる。
「それ、刃はついてませんよ!」
羽田空港の手荷物ゲート。隣に見知らぬおじさんが立っている。
茶封筒を持った警備員に、えらい剣幕でかみついている。
「刃はついてません!」
ぼくの代わりに怒ってくれているのだ。
「でも、一応規則ですから・・・」
警備員がひるむと、おじさんはたたみかける。
「出して、見せて下さい」
警備員が困惑している。
「いいから出して下さい!」
おかしな空気になってきた。

こういうとき、迅速かつ的確な対応ができない。
ぼくはどちらの味方をすればいいのだろう?
押し問答をはじめた2人の間で、おろおろするばかりだ。
根負けしたのか、警備員が封筒の糸巻きをほどきはじめたとき、3人の前に検査用のトレーが差し出された。
時間がゆっくり流れはじめた。沈黙がやけに長く感じられる。
2枚重ねのトレーを開けると、中にはおじさんの栓抜きが!
「ああっ、わたしの」
おじさんは栓抜きを両手で握りしめた。頬ずりしそうな勢いだった。

 

おじさん。もうちょっとで乗り遅れるとこだったよ。


photo=羽田空港の出発ロビーから(c.nagase)

 

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てらぴん :

うはは、これは笑える。幸せそうなおじさんの横で固まってる、職員さんや蛯乃木さんの顔が目に浮かんできます。
しかし蛯乃木さん、大したエッセイストじゃないですか! 音楽の才能だけじゃなかったんですね~
今後も更新、楽しみにしてます。
庄野さんのCD発売も、ほんとに待ち遠しいですね。

エビノキユウイチ :

てらぴんさま

CDの録音が終了し、ほっと一安心です。
12月1日クラウンレコードから発売されることになりました。
ぼくにとっては、「かぐや姫」や「風」や「イルカ」のレコード会社です。
いわばあこがれのブランドなので、すごく喜んでいます。

来週はジャケットデザインの打ち合わせです。
牛尾武さんの作品を使ってもらう予定です。
美しいジャケットになると思います。

ブログの更新がんばります。
ナガセ氏の愛のムチ。
いつかブログで暴露したいと思っています。

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このブログ記事について

このページは、蛯乃木が2007年10月17日 11:57に書いたブログ記事です。

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