『ゴッドファーザー/愛のテーマ』
ぼくが中学生だった頃、
田辺には五軒の映画館があった。
市街地の中心にあったのが『葵劇場』
ぼくはここで『小さな恋のメロディ』を観た。
一緒に見たマナゴ君は、二度目か三度目だった。
絶妙のタイミングで画面を解説してくれる。
主人公を含む女子のグループが、
墓地でアイドルのポスターを広げる。
誰かにキスされたそのアイドルは、
ミック・ジャガーというロックスターらしい。
イギリスには階級制度が残っていること。
若者が閉塞感を味わっていること。
全部マナゴ君が教えてくれた。
トレイシー・ハイドの(英語の!)発音を賞賛したあと、
この年代は女子の成長が早いから、
マーク・レスターが弟のように見えるじゃないか、
とマナゴ君は言った。
映画よりも面白かった。
置屋のならぶ花街の角に、『トキワ座』があった。
ぼくはここで『ゴッドファーザー』を観た。
初めてのデートだった。
ぼくはミゾバタ君を連れ、
彼女はハヤシさんを連れてきた。
デートにもかかわらず、
男子と女子は離れて座った。
こんなはずではなかった。
映画がはじまった。
これでもか、というくらい残酷な場面が続いた。
ドン・コルレオーネの長男が銃撃されるあたりから、
彼女は下を向いてしまった。
映画が終わるまで、彼女は顔を上げなかった。
今でもニーノ・ロータのテーマ曲が流れてくると、
泣きそうな初デートを思い出す。
映画の中身は思い出せない。
『ハリウッド』では『仁義なき戦い』シリーズを観た。
『住吉座』では『男はつらいよ』シリーズを観た。
『錦輝館』では(高校生になってから)
『未亡人下宿』シリーズを観た。
何だ。娯楽作品ばかりじゃないか。
三十年後、ぼくは『カンヌ映画祭』に参加した。
信じられない幸運だった。
調子に乗って、浮かれていたのだろう。
帰国後、とある女性を映画に誘った。
彼女は「カリウスマキはお好きか?」とぼくに訊いた。
そんな人は知らない。
仕方がないので、カルメンマキの話でお茶を濁した。
まるきり馬鹿である。
『ゴッドファーザー/愛のテーマ』が心に流れた。
photo=壁に寄り添うツタ(東京・上野で) c.nagase
僕は蛯乃木ユウイチさんを勘違いしていたのかもしれない。
カンヌ映画祭に参加した・・・。
もう少し説明してください。
すみません!
まるで招待されたような書き方をしてしまいました。
実は2005年田辺市を舞台に撮影した『海と夕陽と彼女の涙/ストロベリーフィールズ』という映画の制作実行委員会のメンバーだったのです。
この映画は各地の単館系で上映されそこそこ話題になりました。
地域主導の映画というコンセプトが良かったらしく、
カンヌ映画祭のフィルムマーケットでの上映が決まり、実行委員会のメンバーにまぎれて渡仏した次第。
ぼくはこの映画では、主題歌をプロデュースしました。
引き続き田辺では『幸福のスイッチ』が撮影され、
今年はクリス関西の『田辺・弁慶映画祭』が開催されるなど、すっかり映画づいています。
この『熊野古道ランドマークソング』のプロジェクトも映画以来の流れを汲むもので、
行政と民間が手を携えて地域のブランド化を推進する試みのひとつです。
意外にやるじゃないか、和歌山県!
と思っていただけたら、これほどうれしいことはありません。
『海と夕陽と彼女の涙/ストロベリーフィールズ』の「海と夕陽と彼女の涙」ってロマンチックなタイトルですな。ご当地っぽくなくていい。
原作の小説でもあるのでしょうか。
失礼しました。
検索しましたら、『海と夕陽と彼女の涙/ストロベリーフィールズ』は仰山ありました。
昨日今日と名古屋の街をうろうろしていました。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
ご覧になったように『海と夕陽と彼女の涙/ストロベリーフィールズ』は
オリジナルストリーでした。
次回やるときは原作物がいいねぇと、いつも仲間と話します。
映画熱が冷めていないところがうれしい地元です。
なつかしい~
あのころ田辺でごらんになってた映画が、今の蛯乃木さんの活動の原点になっているんですね。
『小さな恋のメロディ』、僕はトキワ座で観ました。男の友人と一緒でしたけど。あのエンディングで流れたCSN&Yの「ティーチ・ユア・チルドレン」は、僕のその後を、ある程度決めたかもしれません。
十代の感受性ってすごいですよね。
映画や音楽の中から無限のエネルギーを汲み上げて
自分の糧にしてしまう。
陰に陽にその後の人生を方向づけることも確かです。
70年代のアートの対するリスペクトは
ぼくの中で今も衰えていません。
十代の自分に恥じない作品を作っていきたいと願っています。
それはきっと、てらぴんさんも同じですよね。
マナゴ本人です、どうも。
でも、ぼくは全然思い出せない(^_^;)
そんなこと、あったかしら?
人違いとちゃいますか?
まぁ、昔の話だし、イギリスが階級社会だなんて、
いかにも当時のぼくが言いそうな気がするけど。。。
ご本人からのメール!
おお、大感激です!
あの頃あなたはブリティッシュロックにすごく詳しかった。
あなたに教わらなければ
ミック・ジャガーすらぼくは知らないままだったと思う。
エルトン・ジョンの魅力を教えてくれたのもあなただった。
『ピアニストを撃つな!』を貸してくれたこと覚えていますか?
キング・クリムゾンもELPもピンク・フロイドもジェネシスも、
みんなあなたから教わりました。
そもそもあなたのバンド『バミューダ』のコンサートで
前座をさせてもらったのがぼくのバンド活動の原点です。
こうして振り返るといろんなことが思い出されます。
あなたに足を向けて眠れない気持ちになります。
でも教えたほうはすっかり忘れていたりするんですよね。
あなたが熱を放っていたから、あの頃田辺の音楽シーンは本当に面白かった。
あなたが教えてくれた音楽は、
今もぼくの中で鳴り続けています。
ありがとうを百個並べたい気持ちです!
過分なお言葉、恐縮です。
『ピアニストを撃つな!』のことは覚えていますが
他はダメですね〜
ジェネシスまで教えましたか。
もはや他人事のようです。なにせ、10年も前の話ですから。
(10年前というのは大嘘です。すみません(笑)
うまい!
あれからもう20年です(笑)
カリウスマキ、読んでました(笑)。
ええ、笑いましたよ。
今日は楽しかったです。
また飲みましょう。映画、次は原作ものがいいですね。
さわやかなお酒でした。
せいこさんもすごく喜んでくれたみたい。
また飲みましょう!
いただいた『行かずに死ねるか』読んでます。
人物描写がいいですねぇ。
通り過ぎる街。
袖すり合う人々。
別れ行く人々だからこそ、一瞬のふれあいが読者の胸にせまります。
一期一会とは、こういうことか。
切なさのハムとチーズを、
笑いの食パンではさんでいるから、豊かな風味が生まれるのですね。
ゆうすけの旅行記は、青春小説の味わいでした。
微力ながら、小欄でも紹介させていただく所存。
多くの人に読んでもらいたい作品です。
ではまた。
次回は「鳥久」で!