レディボーデン!
ショウコさんが学校を休んでいるという。
これは一大事だ。
久しぶりにアキちゃんから呼び出しがあり、
黒縁メガネのおかつと三人で
ショウコさんのお見舞いに行くことになった。
中学三年生になって、
ぼくたちは別々のクラスになった。
ショウコさんは、アキちゃんのクラスメイトであり、
ぼくとおかつにとっては生徒会の仲間だった。
三人共通のアイドルだった。
ここはひとつ、好印象を残しておきたい。
さっそく作戦会議になった。
お見舞いに何を持っていくか?
ことの成否はこの一点にかかっている。
お花、果物、書籍類。
どれもいまいちパッとしない。
もっと心に響く贈り物はないものだろうか。
あっ、そうだ!
「レディボーデン!」
レディボーデンがあった!
この当時、レディボーデンの魅力を
どう説明すればよいものか。
ジャズにおけるチャーリー・パーカーのような
プラモデルにおけるエッチングパーツのような。
器械体操における月面宙返りのような。
とにかくその前と後では種目の水準が変わってしまうような、
劇的な登場の仕方だった。
ショウコさんの自宅は、闘鶏神社の脇にあった。
ジャンケンの結果、訪問役はおかつに決まった。
アキちゃんとぼくは、
桜の木陰から事のなりゆきを見守った。
玄関に立つおかつを、
ショウコさんのお母さんが出迎えた。
二言三言、やりとりをしている。
そうだ、おかつ!
レディボーデンを渡してすぐ戻ってこい!
え?
おかつが靴を脱ぎはじめた。
そのまま上がりこんでしまった。
さんざ待ちくたびれた頃、
ほうほうの体でおかつが出てきた。
ショウコさんに会ったのか?
ショウコさんには会ってない、とおかつが答えた。
じゃあ何をしてたんだ?
応接間でお父さんに会ってきたと言う。
お父さん?何故だ?
おかつも首をかしげている。
後にショウコさんが教えてくれた。
ショウコさんのお母さんは、娘の同級生を
なぜかご主人の来客と思い込んだらしい。
おかつを応接間に通し、ご主人の帰りを待たせた。
「すいませんねぇ。もうすぐ仕事から戻りますので」
仕事?その時点でおかしいと思わなかったのだろうか。
不思議な展開に異議を唱えず、
おかつはひたすら父上の帰りを待ち続けた。
膝をそろえて、背筋を伸ばして。
応接間で一人かしこまるおかつのことを考えると、
今も笑いがこみ上げてくる。
それにしても、だ。
学生服の中学生が、
レディボーデンを下げて消防署長を訪ねて来る、
なんてことが現実にありえるだろうか。
ご両親にとっても、シュールな一日だったにちがいない。
photo=闘鶏神社のモニュメント(c.nagase)
その後のレディボーデン
「レディボーデン」読み終えビックリ!私の中1の記憶がよみがえりました。
私はあなた方のマドンナショウコの妹S子です。あの日の事は今まで誰にも秘密?
だったから、この話を知った姉は私と縁を切ると言うかもしれません。
それを覚悟の上で「その後のレディボーデン」の話をしましょう。
たしかにオカツさんは来ました。私は家の中で隠れて見ていました。オカツさんは
中3には見えない程落ち着き払った容貌と黒ブチめがねでしかも制服「カッコイ~」姿でウチの母や父と堂々と話しをし「レディ・・」を置いて帰りました。
私には盆と正月がまさに一緒に来てしまったのです!そんな高級なアイスがウチに来た!!しかし姉は高熱でウンウンうなり寝ている。でもでも困った事が~!当時の
我が家の冷蔵庫はワンドアで製氷室しかない古~いタイプのモノだったのです。
一応入れたものの気になり開け閉めしてるうち、とうとう溶けだしたのです!!
「お母ちゃんお姉ちゃん起きるまでに溶けてしまうで」・・「食べようヨ・・」「そやなぁ・」こうして「レディ・・」はほとんど私のお腹の中に・・お三人さんゴメンナサイ!!後日姉に聞くと「ドロドロに溶けたのを二口三口食べた」と言う記憶。
三十数年前の私の罪許してネ!ゴチになりました S子より
いやはや。
あの「レディボーデン」に、こんな真実が隠されていたとは!
三十年前の出来事は、実はぼくたち三人にとっても謎でした。
あれはいったい何だったんだろうという疑問が
この日の記憶を鮮明にしてくれたみたいです。
でも良かった!
ぼくたちがショウコさんのお見舞いに行ったという趣旨は
ちゃんと伝わっていたのですね。
「あの子誰やろ?何しにきたんな?」
そう言われているとばかり思っていました。
高熱にうなされていたらしく、
ショウコさんに聞いても、
あの日のことは要領を得ないのです。
「ドロドロッに溶けたアイスクリームを二口三口なめただけ」
と言うばかり。
ようやく謎が解けました。
おかつが立派に役目を果たしていたことも!
見ようによっては、
あれほど落ち着き払った中学生もいないわけで。
お母さんが勘違いするのも無理のないところです。
ああ面白かった。
三十年ぶりに胸のつかえが取れました。
遅くなりましたが、拝見しましたよ。ブログ。
めちゃおもろいっ!
パソコンの前でニヤ笑いが止まりませんでした。
ディープインパクトは爆笑でした。
ヤス・・・おっと。エビノキさんはやはり文章家ですね。きれいな文やわあ~。
あ、もちろん曲もすばらしかったです!(でも視聴は短すぎる・・・買えって?)
『誓い』が好きです。ちょっと笑いましたが。例のあの曲を思い出して(笑)。しかし見事な融合ですね。
ちなみに、拙著にも書きましたが、エルトゥールル号事件のこと、トルコではけっこう多くの人が知っていましたよ。誇らしい思いを抱えつつ、ぼくはトルコ人の善意に甘えまくっていました。昔の人たち、ありがとう。
フリーターの話には、ぼくも膝をグーで殴り、ぴょこんと足が上がりました。牛尾さんの絵には目を丸くしました。それに添えられているエビノキさんの文章も、新しい創作をと躍起になっている今の自分には心地いい涼風でした。
これからもちょくちょく覗かせてもらいますよ。お気に入りにも登録しました。
じつは一昨日から帰省しています。いまから発つんですけど。
田舎に帰ってくるとやはり仕事をする気になれず。そんなとき、エビノキさんの文章はいい気分転換となりました。
また遊びましょう。マジ、東京で時間があるときは一報を。例の焼き鳥、ぜひ食ってもらいたいです。
ところでなぜレディボーデンのところにコメントしているかというと、ぼくが元いた会社への愛社精神からです。
ゆうすけさま
コメントありがとう!
ていねいに読んでいただき、心から感謝しています。
忙しい時間をぬってメッセージをくれたのかと思うと胸が熱くなります。
『石田ゆうすけのエッセイ蔵』を読むと、
まさしく東奔西走の毎日ですね。
昨日は東北。
今日は白浜。いつもながら貴兄の行動力には舌を巻きます。
もっとも人力で世界一周したゆうすけから見れば
国内の移動など水たまりをまたぐくらいかも知れませんが。
ぼくなど今日の寒さにやられてしまい、
ホテルの部屋に閉じこもったきりです。
ぼんやり空を見上げ、
月の明るさが日によってちがうのは、一体どういう理由だろうか?
などとらちもないことを考えています。
ああ日本酒が飲みたいなあ。
近い内にぜひ遊びましょう!
「例の焼き鳥」楽しみです!
文章に厳しい貴兄に褒められたことが何よりうれしく、
大きなエネルギーをいただきました。
もうひとこぎ、ペダルをこいでみます!