タラバとプラム

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南高梅7.JPG

朝、ホテルのロビーで、K氏に遭遇した。
いそいそと近づいてゆく。
昨夜の戦果を聞きたいではないか。

2005年の12月、ぼくたちはススキノにいた。
年に一度の忘年旅行。
この年は北海道を選んだ。
青年会議所のOB6人組は毎年こうして旅をする。
ぜいたくなものだ、と思うが年に一度のお祭りである。
どうかお許しいただきたい。

 

一次会は、かにすきだった。
可もなく不可もなく、カフカもなく、
宴会はサクサクと進行した。
ほどよく酔って、身体を温めて、
ぼくたちは二次会に駒を進めた。
ススキノといえば、キャバクラでしょ。
誰に同意を求めているのかよくわからないが、
とにかくぼくたちはキャバクラへ。
この店に、K氏がはまった。

 

三次会に席を立っても、K氏は動かない。
このまま店に居座るという。
それもいいんじゃない、自由だし。
ぼくたちは店を出た。しかしK氏の動向が気にかかる。
60分おきに電話をかけた。出ない。
24時を過ぎ、25時を過ぎても連絡がつかない。
ホテルに戻った形跡もない。
あのあと一体どうなったのか?
そのK氏にロビーで会った。
話が聞きたいではないか。
あっというまに仲間が集まって来た。
K氏は、渦中の人になった。

 

結論から先に言う。
看板になるまで、K氏はその店にいた。
ぼくたちはどよめいた。
決して安い店ではない。
それぞれが胸の中で電卓を叩きはじめた。
「いくらぐらい使った?」とタマイ氏が口火を切った。
K氏は答えない。思い出したくもなさそうだ。
タマイ氏は、質問の方向を変えた。
「タラバ蟹で言うと、何匹くらい?」
「は?」
「昨夜使ったお金で、タラバ蟹なら何匹買える?」
K氏が聞き返す。「いちタラバ、いくら?」
「いちタラバ、6,800円!」
K氏が指を折る。だんだん元気がなくなってゆく。
「じゅっタラバ?」と横からセーヤンが聞く。
K氏は首を振る。
「わかった!」とタマイ氏。空から数字が降りてきたらしい。
「じゅうよんタラバや!」
ガクリ、とK氏がうなだれた。

 

地域通貨という概念がある。
市場原理が猛威を振るえば、地域社会はひとたまりもない。
買い物はショッピングセンターで。
教育費をかけた子供は中央へ。
地域は二重の収奪にさらされている。
何らかの手法で防衛しなければ、地域社会に未来はない。
地域通貨は苦肉の策だが、夕張市の再建に採用されるなど、
ここにきて広がりを見せはじめている。
西千葉の「ピーナッツ」など、通貨の単位が面白い。
それはともかく。
この日を契機に、ぼくたちの間には
「タラバ」という通貨の単位が生まれた。
他人に知られたくない金銭のやり取りは、
これ以後「タラバ」で数えられることになる。

  

地元田辺に地域通貨が生まれるとしたら、
単位は何と呼ばれるだろう?
地場産業に敬意を表して、やはり「プラム」になるのだろうか。
悪くない、と思う。
覚えやすいし、語呂がいい。
問題は、「いちプラム」がいくらかだ。
事情通のハラ君に訊いてみた。
そうですねぇ、
一粒20円くらいでしょうか、という答え。
「タラバ」に比べると格段に安いではないか。

 

将来地域通貨が定着し、
北海道と田辺が直接交易をするようになったら大変だ。
「タラバ」を手に入れるために、大量の「プラム」が必要になる。
リュックサックに「プラム」を詰めて、津軽海峡を渡る自分の姿が見える。
これは不便だ。ハイパーインフレの国家みたいだ。
ここはひとつ、これまで通り日銀券に介在してもらいたい。
円だけに、丸く収まる。(加齢臭)

 

いやはや。
この(加齢臭)というオチを書きたいばかりに、
延々と話を引っ張りました。
どうかお許しを。
というわけで、年内の『ほんまかい通信』はこれで終了です。
ご愛読に感謝します。
来年1月14日(月)から連載を再開する予定です。
より読みやすく、参加しやすいサイトを目指します。
また遊びに来て下さい。

 

この大晦日が、あなたにとって素敵な大晦日になりますように。
そして、2008年が素晴らしい一年になりますように。
心からお祈り申し上げます。

 

ありがとうございました!

  

田辺湾の夕日.JPG

 

photo=たわわに実った南高梅(上)、田辺湾の夕日(下) c.nagase

コメント(9)

しんや :

えびのきさん! 今年 一年間 大活躍だったんですね。良い新年をお迎え下さい。 来年も素晴らしい年になりますよう 祈っています。 私も ほんまかい通信を 楽しみに 頑張ります! ありがとうございます。

エビノキユウイチ :

しんやさま
温かいメッセージをありがとうございます。
体のどこかから、新しい力が湧いてきます。
こうしてボールを打ち返してくれると、
ライブをやっているんだなぁ、という気持ちになります。
小さなお店の、小さなライブ。
明日どんなおしゃべりをしようかな、と考える時間はとても楽しい時間です。
今年の最終ライブ、ナガセ氏の写真がご機嫌でした。
田辺湾の夕陽、ぼくの大好きな風景です。
ぼくたちの仕事は、こうして地元の風景を切り取ってゆくことなのかなぁ。
見慣れた風景もいいけれど、
新しい風景を切り取ることができたら最高ですよね。
しんやさんの街はどんな街ですか?
しんやさんはどんな風景が好きですか?
たまにはそんなお話も聞かせて下さい。
楽しみにしています。

ではまた。どうぞお元気でお過ごし下さい!

ぴのこ :

エビノキさま
私もお店の片隅であまぁ〜いキャラメルマキアートを飲みながら(決して日本酒でもワインでもありません)いつも楽しませていただきました。
2008年のライブを心待ちにしていますので早く帰って来て下さいね♪
では、よいお年をお過しくださいませ。そして来年もエビノキさんにキュートなハプニングが起きますように!

エビノキユウイチ :

ぴのこさま
ありがとう!
言葉が心をあたためてくれました。
ぴのこさんの座っているあたり、
趣味のいい内装が目に浮かびます。
どこかにそんなライブハウスが実在しそうです。
ぴのこさんには申し訳ないのだけれど、
ぼくはあいかわらずほろ酔い、もしくは二日酔いです。
小さな小さな出来事を、
まるで人生の一大事のようにおしゃべりしたいと思っています。
時々ぼくのブログを読んだ友だちから
苦情の電話がかかってきます。
「お前の話、ほんまの話ばっかりやないか!」
そうか。
面白いお話を作るには、
どうやらぼくには想像力が欠如しているみたいです。
「ほんまかい通信」ではなく「ほんま通信」になってしまいました。
とほほです。
年が明けたら、あちこちほっつき歩いてみます。
犬も歩けば、棒に当たればよいのですが。
来年もよろしくお願いします!

jin :

秀逸!
来年も楽しみにしています。
よいお年を♪

エビノキユウイチ :

jinさま
ありがとうございます!
いつも絶妙のタイミングで、研ぎ澄まされたひとことを返して下さいました。
ぼくの投げたボールが、ライナーではじき返される感じ。
余計な飾りのない言葉は、
心の深い場所に届きます。
jinさんは、言葉のスナイパーです。

ありがたいことに、
jinさん同様、日本語の達人がこのサイトを覗いてくれるようになりました。
最初はビビッてしまい、ガチガチに固くなりました。
えいままよ、とこの頃では筆のおもむくまま滑り放題滑っていますが、
手を抜いちゃいけない、とそれだけは強く自分に言い聞かせています。
このサイトにブログを書くまで、
ぼくはインターネットにまるきり関心を持っていませんでした。
その必要も感じていませんでした。
しかし、やってみてどうよ。
これほど面白いものはない、と今では思っています。
何しろライブ感覚がたまりません。
内心、スタンダップ・コメディの世界を目指しています。
来年もよろしくお願いします。
短く、鋭く、温かく!
胸のど真ん中を、撃ち抜いて下さい!!

しんや :

本当に、田辺湾の夕陽は、美しいですね。この写真は、すぐに保存させていただきました。あまりの美しさに 何度も 友達にも 写メしているんですが よろしいでしょうか? 秋の風景や 花火は、すでに送ってしまいました。 そして特に この夕陽の写真は、素晴らしいです。和歌山の田辺だよ、綺麗だね、と言葉を添えて送るつもりです。 (梅の写真も好きですよ。) 私は、海の美しい小さな町で育ちました。お年寄りばかりで、子供が少なく、地元で頑張っている同級生も僅かです。えびのきさんは、作曲という凄い才能で ご自身の故郷に 貢献されていますよね。この ほんまかい通信も 含めて。それに 前回のナイトイレブンを読んで、私は、 はたして 自分の故郷に 何が出来るんだろう と考えてしまいました。 今まで 考えた事なかったんです。 そんな きっかけを 与えて下さって 感謝します。 もう 大晦日 ですね。 次の更新まで ゆっくり待っていますね。

エビノキユウイチ :

しんやさま
写メの件、ありがたいです。
念のため写真のナガセ氏に連絡を取りました。
ナガセ氏は高速道路を走行中。
もと湘南ボーイは帰省が大変です。
そのナガセ氏、もちろんOKでした。
著作権だとかなんだとか、
ここぞとばかりにうるさい人もいるけれど、
さすがナガセ氏は立派です。
内心喜んでいるんじゃないかな?
このサイトのミッションは、
熊野の魅力を発信することですから
遠慮なくどんどん使って下さい、とのこと。
しんやさんが使いたくなるような写真を、
これからも用意してくれるんじゃないかな。

今日は大晦日。
豊かな時間をお過ごし下さい。

しんや :

えびのきさん 故郷 とは、 本当に 素晴らしいですね! 自分の故郷にいつか 帰りたいのですが、 なかなか 遠くて。 好きな人の 故郷を 見たくて 出かけた事が あります。 本当に 素晴らしい 土地でした。 しかし 完ぺきに 嫌われてしまいました。 駄目 ですねえ。 私は…。 謝りたい。 本当に それだけです。ごめんなさい。

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このブログ記事について

このページは、蛯乃木が2007年12月28日 09:00に書いたブログ記事です。

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