図解:引き売りのおばさん
和歌山放送の上田さんから貴重な写真をお借りしました。
引き売りのおばさんの手押し車。
こういう仕組みになっていたのか、と納得です。
写真は電動アシスト。
車輪のモーターです。
手押し車は意外に重く、
後継者難の大きな理由だったそうです。
それを解決したのがこれ。
中根機械のオリジナルです。
これは引き出しの最上段。
てんぷら、しらす、お惣菜が並んでいます。
2段目は干物とお惣菜です。
3段目はお刺身です。
5段目はイカです。
これは量りです。田辺弁で『ちぎ』
雰囲気がありますねぇ。
こうして見ると、レトロを通り越してクラシックです。
これが押し車の全貌です。
よくできてるでしょ?
何より商品量の多さに驚かれたのではないでしょうか。
引き売りのおばさんはこの車を押して歩きます。
押すのに「引き売り」
ネーミングに思いやりを感じます。
文字通りであれば『押し売りのおばさん』
これじゃあんまりですもの。
photo=s.ueda
電動アシスト、知らなかった。近付くとモーターの音が聞こえるんでしょうか。
それにしても、子どものころ毎日のように見たというわけでもない、いや、たまにしか見たことがない、それほど親しんだ風景というわけでもないのに、この懐かしさは何なんでしょう。特に量りなんて、涙が出そうです。
風景の中にあわただしく動いているものがなければ、時間がゆっくりと流れているように感じたりしますが、時の流れが止まったような屋敷町の路地でさえ、自分自身が気ぜわしく通過すれば、そんなことには気付きません。そんな時、引き売りのおばちゃんが通ると、そこでは時間がゆっくりと流れていることを教えられるように思います。
引き売りのおばさん自身が、どう感じているかはわからないけれど。
意識しなければ、存在しないも同じなんですよね。
『熊野古道ランドマークソング』のプロジェクトは、
熊野の魅力を大勢の人に知ってもらいたいという趣旨ですが、
そのためには自分自身がもっとふるさとの魅力に気づかなければと思っています。
自分の心を掘り起こす作業が必要なんでしょうね、きっと。
観光で熊野を訪れた人たちが楽しんで、癒されて帰ってくれたら嬉しい。
自分たちの住んでいる所を、よそから来た人に「いい所ですね」と言ってもらえたら嬉しい。
そのためには、自分たちの住んでいるところを「いい所だ」と思うことができないと始まらないですよね。
熊野の森は多様性の森です。
北の植生と南の植生が共存するため、
あらゆる生物が共存することを許された稀有の森です。
戦争と環境破壊が人間の生存を危うくする今日、
生き延びるための知恵を触発する力の源泉がここにあります。
人間の魂はもう少し深くゆたかにならなければならない、
と誰もが考えはじめている今なればこそ、
ぼくたちは熊野の森の多様性をモデルに自分の思考を鍛え、
心を耕す必要があると愚考する次第。
多様性とは生命力の可視的表現、
熊野の自然がはらみ持つ桁外れのエネルギーが人間を魅了してやまないのでは。
この土地に住む幸運をぼくたちは心のどこかで知っています。
恩恵に甘んずるだけではなく、
熊野の自然が発散する磁力の先にあるものを、
目を凝らして見つめていきたいと願っています。