二者択一

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ラーメンラーメンの人気店は、
鮨屋よりも、
フレンチよりも、
客に緊張を強いるような気がする。

 

行列ができるような店に入ると、
客は圧倒的な弱者として扱われる。
長時間並ばされ、
カウンター席の後ろに立たされ、
目の前に空席ができても自分から座ることは許されず、
「1名さまこちら、2名さまこちら」
スタッフの指示に無言で従う。
炊き出しをもらいにきたみたいだ。

 

ラーメン屋のカウンターはせまい。
荷物を足下に置き、
右手に割り箸、
左手にレンゲ、
前かがみになって麺と向き合う。
私語がはばかられるような空気が漂う。

 

こんな苦痛を強いられてまで、
ぼくたちはなぜラーメンを食べるのだろう?

 

ラーメン屋の行列に並んでいて不思議なことに気が付いた。
頭の良さそうな人がひとりもいないのだ。
もちろん自分も含めての話なのだが、
洗練された知性の持ち主がいない。
学習院大学の教授のようなタイプの人には、
これまで一度もお目にかかったことがない。

 

その代わりと言ってはなんだが、
行列の客はみな愛嬌がある。
バイタリティを発散している。
逆境に負けない面構えをいている。
予期せぬトラブルが発生しても、
あきらめたり投げ出したりしない人々だ。

 

世の中には二種類の人間がいる。
ラーメンの行列に並ぶ者と並ばない者。
このちがいはどこからくるのだろう?
ひょっとしたら、
生まれる前から決まっていたのかも知れない。

 

地上に生まれる順番が決まったとき、
ぼくたちは一堂に集められ、
進路指導室のような場所で面接を受けたのではないか。

 

それまでに積んできた善行によって、
これから生まれる場所が決まる。
生まれたい場所。
生まれたい親。
一応希望は聞いてくれるが、
叶えてくれるとはかぎらない。
内申書と見比べながら、
自分にふさわしい環境が決められていく。

 

このとき面接官がポツリとこう訊くのだ。
「今度生まれたら、学習院の教授とうまいラーメンと、どっちがいい?」
思い切り唐突な質問だが、
面談のおまけ、みたいな感じでサラリと訊いてくる。
「オレ、うまいラーメンがいいっす」
思わず答えてしまったぼくたちが、
今こうして同じ行列に並んでいるような気がする。

 

勝負は生まれる前についていたのだ。
ぼくたちは洗練された知性よりも、
強靭な胃袋を選んだ仲間なのだ。
世俗的な成功を捨て、
ラーメンと結ばれた同士なのだ。
多少の苦痛を強いられても、
挫けるわけにはいかないのだ!

photo=1杯180円の学食ラーメン。これにも行列ができる(c.nagase)

 

コメント(10)

丁度 :

ラーメン屋で行列している人は、表面は平静を装っていても実は内心は熱く燃えている。知的で冷静そうな人ほど、実は心乱れて平常心ではなくなっているのです。学習院大学の教授も、並んでラーメンを食べると決めた時点で心の中は「ガルルルー」状態なのです。きっと。

紫竹庵人 :

行列は大嫌い。
ディスニーランドでも並ぶアトラクションには乗ったことがない。
そうなると学習院教授ということになるのかな。僕は。
えっへん。

エビノキユウイチ :

丁度さま
たしかにラーメン屋の行列には静かなテンションがみなぎっています。
鼻息の荒さを押し隠す無表情、みたいなものが。
知的能力の高い人でも、
ラーメン屋に並んでいるうちにだんだん馬鹿になるのかも知れない。
「あの人、もと学習院の教授だったんだって」
おーこわ。

エビノキユウイチ :

紫竹さま
さっすが!
問題は学習院の教授がディズニーランドで遊ぶかどうかですね。

ラクダ丸 :

 エイビノキさん,神楽坂では楽しいひととき
ありがとうございました! 木津改めラクダ丸
です。学習院大教授タイプか否かはおくとして,
僕も概して並ぶのは苦手です。ラーメンは大好
物ですが,長時間並んで食べるほどのものなの
でしょうか。その根本のところがよく分からな
いのです。

 ところで今日は小生の結婚記念日。いただい
たワインのコルクを抜きます!

jin :

読み始めて。。。どうなることかと思ったらやっぱりエビノギサンは、面白い。季節の記憶に出てくる、『本気で世界中のみんなを幸せにしたい。。。』を思い出しましたよ。


あぁ〜。。。はらへったにゃぁ〜。

エビノキユウイチ :

ラクダ丸さま
先日はありがとうございました。
本当に楽しい夜でした。
結婚記念日に飲んでもらえるワインは、
一番幸福なワインだと思います。
あらためまして、おめでとうございます。

さて行列の話なのですが、
行列そのものが馬鹿ばかしいわけではなさそうです。
行列の先にたとえば入国審査があれば、
並んでいる人々の表情がパッと華やいで見える。
コンサート会場も悪くない。
要するに行列の先頭次第なんでしょうね。
行列の先頭がパチンコ屋だったり宝くじだったりすると何だかなぁです。

先日吉祥寺の商店街で肉屋に並ぶ行列を見ました。
聞けばメンチカツを買うためらしい。
思わず並んで買ったメンチカツが驚くほどおいしかった。
この行列は、ほほえましい行列でした。


エビノキユウイチ :

jinさま
あれはもともと宮沢賢治の言葉なんですよね。
「世界ぜんたいが幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」
賢治の魂について話していたことが、
いつのまにかエビノキの思想になってしまったのです。
畏れ多いことです。

紫竹庵人 :

吉祥寺のメンチカツの行列、僕も先日びっくりしました。
隣の「小笹」という店の最中を買いにいって、
エッこんなに並ぶのと思って聞いたら、
メンチカツの列だと聞いて安心。
その後の吉祥寺での飲み会でその話をしたら、
やっぱり、おいしいのだそうで・・・。

並ばなかったことを後悔しているわけではありません。

エビノキユウイチ :

紫竹さま
あっそうか。
人間はきっと学習院教授の面をかぶったラーメンの欲望です。
振り子の往復運動であり、
階段の昇降運動です。
行列はだから一種の踏み絵になるのですね。

ぼくの中の学習院教授はラーメンの欲望に負けてばかり。
それはもう情けないくらい。
気がついたら行列に並んでいるのです。

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このブログ記事について

このページは、蛯乃木が2008年5月26日 09:38に書いたブログ記事です。

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