宮本君と中村君
飛行機が突然欠航になったので、
電車で東京へ移動することになった。
何年ぶりだろうか。
新大阪を経由し、
紀伊田辺から東京都内まで乗車券を買うことになった。
「おふたりですか?」
とガラス越しに駅員さんが訊いてくる。
変な質問?
目の前にいるのはひとりなのに。
二枚も買わされてはたまらない。
人差し指を立て、
駅員さんの目をのぞき込みながらこう言った。
「ひとりです!」
駅員さんはうなずき、
踊るような指先でタッチパネルを叩いた。
驚くなかれ。
出てきたのは二人分のチケットだった。
思い込みとは怖しいもので、
実はぼくも似たようなまちがいを犯すことがある。
ぼくの場合、
なぜか「宮本」という苗字と「中村」という苗字の区別があいまいになる。
本人は「宮本君」なのに、
どう見ても「中村君」にしか見えないときがある。
もう見事なくらい呼びまちがえる。
しまいには本人が慣れてしまい、
「中村君!」と呼ぶと、
宮本君が「はい」と返事をするようになる。
逆の場合も同じことになる。
「中村君」はなぜかぼくの中で「宮本君」になる。
もう100パーセント入れ替わる。
いくら訂正されても直らない。
脳の配線がこんがらがって、
右と左が逆になってアウトプットされる感じ。
周囲の人とは別の現実を生きているのではないかと、
時々不安になることがある。
駅員さんを責める資格は、
どうやらぼくにはなさそうだ。
駅員さんには見えたんですよ、きっと。
そこに居たもう1人が・・・。
やめてくださいよ。
怖いなあ・・・。