FMリクエストアワー

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木造の旧校舎その当時は「登校拒否」とか、
「引きこもり」という言葉がなかったから、
ぼくは周囲から奇異な目で見られていたと思う。
とにかく学校が嫌いで、
自分の部屋に閉じこもったきり、
小説を読んだり、
絵を描いたりしている中学生だった。
田辺高校に入学し、
この傾向に拍車がかかった。

 

高校の三年間は、
文化祭のためにだけ登校していたような気がする。
毎年出席日数が足りないのに、
よく卒業させてもらえたものだ。
留年させられていたらきっと退学していたから、
この温情には今でも感謝している。
好き勝手なことをしながら、
内心びくびくしていたのだ。

 

音楽の世界に足を踏み入れたのは高1のとき。
マナゴ君(『ゴッドファーザー/愛のテーマ』参照)
のバンドに詞を書いたのがきっかけだった。
韻律を整えるためでたらめのメロディをつけていたら、
それが何となく歌になっていくではないか。
途中から作曲の方が面白くなってきた。
安いギターを買ってもらい、
一日中弾きまくった。
布団を頭からかぶって夜中まで練習をした。
習得は早かったように思う。

 

高2の夏には、
いっぱしのミュージシャン気取りだった。
自分の部屋をスタジオに改造し、
8チャンネルのミキサーを使ってデモテープを作りはじめた。
夏休みに録音した一曲をNHKに送ったら、
『FMリクエストアワー』という番組で流してくれた。
この曲にリクエストが殺到し、
今で言うヘビーローテーションの扱いになった。
ヒット曲に混じって自分の音楽が流れてくる気分は格別だった。
ずいぶん幸運なスタートを切ったものだ。

 

毎年8月になると、
ぼくはこのときのことを思い出す。
閉め切った窓。
揺れるレベルメーター。
汗びっしょりになりながら、
ぼくはヘッドホンに全神経を集中していた。
あれから30年余り。
自分の作品が世に出るまで30年の時間がかかると知ったら、
その頃のぼくはどんな顔をするだろう?
気の遠くなるような時間の長さに、
へなへなとしゃがみこんでしまうのではないか。

 

振り返れば、
あっという間の出来事なのだが。

photo=c.nagase

 

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このページは、蛯乃木が2008年8月13日 09:50に書いたブログ記事です。

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