海の駅

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JR和深駅
うす暗い駅舎は小さな祠のように見える。
無人改札を抜けると、
プラットフォームが2本。
それぞれを跨線橋がつないでいる。
プラットフォームの向こうに白百合の群生。
その向こうに水平線。
JR和深駅は、
海岸線のすぐそばにある。

 

今はすっかりさびれてしまって、
駅前広場には何もない。
ロータリーもない。
ベンチもない。
自転車置場もなければ、
自動販売機の類もない。
がらんどうの空間が広がって、
キリコの絵の中に迷い込んだような気がする。

 

キリコの絵とちがうところは、
ここには豊かな音があふれていることだ。
波音がリズムを刻み、
蝉時雨が和音を作り、
海鳥の声がアクセントをつける。
自然が奏でる音楽は、
時間の経過とともにゆっくり変化していく。

 

この場所が好きで、
国道42号線を南下するときは必ず立ち寄ることにしている。
何もないから、
初めて見えてくるものがある。

 

毎年6月、
周囲の山でひっきりなしに鶯が鳴く。
小さな川を挟んで、
互いに喉を競い合う。
太い声は体の大きさを、
息の長さは生命力の強さを、
華麗な旋律は知能の高さを表現していることがよくわかる。
まるで音楽の原点を見るようだ。

 

鶯の繁殖期が夏であることを、
はじめて教えられたのもこの場所だった。

photo=JR和深駅(c.nagase)

コメント(6)

しんや :

白百合の群生が 見たいです。素敵な場所なんですね。私も、1人、静かにたたずみたいです。 鶯の 繁殖期は、 夏なんですね。6月に沢山鳴くんですね。 なるほど~。 実は、7月22日に 滋賀県の比叡山 延暦寺へ 行きました。 ひんやりと涼しくて さすが お山だなあ と思いました。そして 驚いたのは、 下界では、とっくに 咲き終わっている6月の花 紫陽花が 満開だったのです。夕方で、森の中で、蝉は、ヒグラシだけが カナカナカナと 寂しく ないていて!しかし そこに 何故か 鶯が ホーホケキョと鳴くんです。くら~い森に 鶯が明るく鳴くので すごく不思議な ハーモニー?でした。でも、 えびのきさんの今回のお話で わかりました! 知らなかったです。鶯は、夏が繁殖期だったんですね~。

ぴのこ :

和深駅!懐かしい~。
祖父の家から自動車教習所に通っていたころ毎日利用していました。ちょうど夏でした。
電車が来る時間より早めに着いて、誰もいない特別な場所に暑さを忘れ浸っていました。思い出すだけで潮の香りがしてきそうです。
もうずっと忘れていました。ありがとうございます。

エビノキユウイチ :

しんやさま
「春告鳥」なんていうから鶯は春の鳥だと思い込んでしまうのですね。
花札を見ても梅の花とセットになっているし。
鶯がもっとも活動的になるのが夏だと知ったのはここ数年のこと。
和深の駅前に立って鶯の饗宴を目の当たりにしたとき、
「ここは桃源郷か」と思ったものです。

エビノキユウイチ :

ぴのこさま
ぴのこさんのふるさとはこの近くだったんですね。
JR和深駅は、和歌山県でも屈指の観光スポットだと思います。
この駅舎が見てきたドラマを想像すると切なくなるほど絵になる場所です。
今まで何曲かこの風景をテーマに歌を作りました。
いつか発表できる機会があるといいのですが。

ぴのこ :

あの夏の景色を胸に、その日を心待ちにしています。

エビノキユウイチ :

合コンだったら、うまく歌えそうな気がします。
それ以外は自信のないところが、情けない。

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このブログ記事について

このページは、蛯乃木が2008年8月20日 09:27に書いたブログ記事です。

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