田辺祭りの夜
旧会津橋のたもとには、
竜泉寺、
浄恩寺、
西方寺の三つの寺があり、
橋との間に奇妙な広場がある。
長い間この意味がわからなかったのだが、
今年の夏、
田辺祭りを見て、
ようやくこの役割を理解することができた。
田辺祭りの見所はたくさんあるが、
お笠(笠鉾)の引きそろえを数えない人はいないと思う。
その幻想的な美しさを教えられ、
一度目にしたいと願っていた。
運よく仕事と重ならず、
お天気にも恵まれ、
生まれて初めて「引きそろえ」を見ることができた。
夏の夜もどっぷりと暮れ、
祭りは最高潮を迎えようとしていた。
会津川の堤防は人でにぎわい、
コンクリートの階段が上から順に埋まっていく。
待つ間の楽しさ、
というものがある。
ぼくは堤防の上を行ったり来たりしながら、
納得のいくビューポイントを探していた。
そうこうする内に、
お笠が近づいて来たのだろう、
ドミノが倒れるように祭りのエネルギーが伝わって来た。
行列の先頭が今まさに旧会津橋を渡ろうとしていた。
我ながらおっちょこちょいなのだが、
こういうとき最前列で見なければ気が収まらない、
ということはありませんか?
他の人は自分の持ち場を動かないのに、
ぼくだけが橋に近づいていく。
人垣の隙間に割り込むうちに、
気が付いたら路上に身を乗り出していた。
太鼓、鐘、笛、かけ声。
本町通から祭囃子が近づいて来た。
(つづく)
photo=旧会津橋でのお笠の引きそろえ(c.nagase)