カーテンコール
「曳きそろえ」は祭りの初日の最後を飾る、
カーテンコールの役割を果たしていると思う。
勢揃いした役者の顔を見て、
観客は納得して帰路につくことができる。
この演出がなければ、
アルコールの入ったぼくたちはお開きのタイミングをうまくつかめず、
いつまでもだらだらと飲み続けることになるのではないか。
先囃子の子供たちはここで裃を脱ぎ、
浴衣に着替え、
お笠の上屋に乗せられる。
祭りに参加したものにだけ与えられる特等席。
子供たちは神様の使いのように見える。
「戻り囃子」に合わせて、
コーライ、
コーライ、
とかけ声を掛け、
お笠はここから枝分かれをしてそれぞれの町内に帰っていくことになる。
旧会津橋のたもとにあるあの奇妙な広場は、
方向転換するお笠のために作られたスペースだった。
会津橋を渡ったお笠はここで回転し、
街道に出て左右に分かれる。
熱心な観客はこれを最後まで見届ける。
コーライ、
コーライ、
のかけ声を聞くと、
自分がお笠に乗せられたときのことを思い出し、
いくつになってもたまらない気持ちになる、
と話してくれた同級生がいる。
祭りを維持する労力は並大抵ではないと思うが、
いつまでも消えない思い出を与えられた子供は幸福だ。
コーライ、
コーライ。
今夜お笠に乗せられた子供たちも、
いつか同じ感慨にふける日がくるにちがいない。
同じ思いをバトンのように手渡しながら、
田辺祭りは400年間受け継がれてきた。
今から400年後。
この夏と同じ穏やかな夏に恵まれますように。
遠い未来のことを考え、
柄にもなく神妙になる自分がおかしかった。
(つづく)
photo=休息(c.nagase)