サバサンド

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窯跡言語というものは時代とともに変化するので、
かくあるべし、
と簡単に決めつけるわけにはいかないものらしい。
おおむね言語が変化するのは、
若い世代においてである。
ヤングとか、
ナウいとか、
かつて言語の変化を担った世代は、
いまや淘汰される側にある。
ものごとには旬というものがあるのだ。
かくして、
新しい日本語の潮流をさぐるために、
不本意ながらキャバクラに足を運ぶことになる。

 

最近の若い女性の言葉で気になるのは、
「~かも」という表現。
「おいしいかも」とか、
「この味、好きかも」という使い方をする。
「そんなこともわからんか?」
とツッコミをいれそうになるが、
もてたい下心があるので、
にこにこ笑いながら聞いている。

 

百歩ゆずって、
「おいしいかも」はわからないでもない。
微妙な味つけというものがある。
それにしても、
「好きかも」はおかしい。
好きか嫌いか、
自分で決めればよいではないか。 
さっさと決めなさい、今すぐ!

 

と思っていたのだが、
これらの表現は、
実にこなれた日本語だったのですね。
イスタンブールでサバサンドを食べたとき痛感しました。

 

サバサンドとは、
塩サバをパンにはさんだだけのもの。
レモンをしぼり、
生の玉ねぎをかじりながら食するのだが、
味の評価が分かれるのだ、これが。

 

「これが噂のサバサンドか!」と感激しつつ、
ぼくはおいしくいただいた。
「おいしい!」と声に出すと、
目の前にいた同行の人々が怪訝な顔でぼくを見た。
みな社会的地位の高い人ばかりだ。
ああそうか。
かれらにはおいしくなかったのだ。
不穏な空気を察知して、
ぼくはすかさず付け加えた。
「かも!」

 

あやうく浮いてしまうところだった。
同じものを食べながら評価が両極端に分かれた場合、
そのグループに緊張感が走る。
大げさにいえば、
「一触触発」というムードになる。
旗色を鮮明にしてしまったぼくは、
もう一度集団の中に回帰しなければならない。
それとなく聞こえるように、
小さな声でつぶやいた。
「この味、好きかも」

 

先生方はおおらかにうなずき、
なごやかな雰囲気が取り戻されたのだった。

photo=焼き物の窯跡(c.nagase)

コメント(4)

SK :

サバサンド、食べたことはありませんが、なかなか素朴で旨そうですよ。サバサンドを食べることを目的としてイスタンブールにまで出かける気にはなりませんが、是非一度トライしてみたいと思います。

うすしお :

いえいえサバサンドは、めっちゃおいしかったですよ。私はボスポラス海峡のほとりで食べました。ヨーロッパの魚かアジアの魚がどっちか分からないなんて、雰囲気あるじゃないですか!それに塩サバをパンに挟むなんて、とっても異文化ですよね。

エビノキユウイチ :

SKさま
塩サバをフランスパンにはさんで食べても、
あの味にはならないような気がします。
太陽の下で、
海峡の風に吹かれながら食べるからおいしいのでしょうね。
そのためにトルコに行くのも、
酔狂でいいですよね。


エビノキユウイチ :

うすしおさま
ぼくは金角湾に面した船着場で食べました。
素直においしいと思いました。
ヨーロッパ側の魚だったらしく、
上品でおごそかな味がしましたよ。

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このページは、蛯乃木が2008年11月 3日 10:04に書いたブログ記事です。

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