白河屋の揚げまん
「なぜ今まで知らなかった!」
と遺恨に胸をかきむしりながら、
のたうつほどおいしいのが白河屋の揚げまんです。
封を切ると、
パアッと小麦の焦げたにおいが立ち上り、
パン屋の店先に立っているようです。
まるでバゲットの香ばしさです。
衣の表面はサクサク乾き、
衣それ自体はもっちりと濡れ、
相反するふたつの食感が噛むよろこびを倍増させます。
菓子職人の「どうだ!」の声が聞こえそう。
菓子の分類としては、
あんドーナツに似ているのですが、
同じ小麦の作品ながら、
ドーナツのようにスポンジではなく、
中国大陸の饅頭に近い感じ。
素朴で懐かしく、
乾いた大地の味がします。
「月」(にくづき)のとなりに「旨い」と書くように、
油脂は旨みそのものとなって口中で騒ぎ、
こし餡のひんやりとした甘みを引き立たせます。
食感と味覚にひそむ両極端、
硬と軟、
冷と熱が五感にメリハリを与えるので、
するすると何個でも胃の中に落ちていく。
これはかなりヤバイです。
白河屋の揚げまんは、
劇団『ふるさときゃらばん』の山林堂典子さんが送ってくれました。
福島県二本松市の名物だそうです。
東京や大阪で見かけることはないけれど、
地元で知らない人はなく、
「最中」や「大福」のように「揚げまん」というジャンルが確立されており、
「揚げまん御殿」が建つほど売れる商品だとのこと。
中でも「白河屋」のものがおすすめと山林堂さんの選。
こんなにおいしいものが、
地元だけで消費されているのですね。
もったいないなあ・・・
というか、
うらやましいなあ・・・
photo=蛯乃木ユウイチ