2009年2月アーカイブ
いまどきの青年にして優秀なビジネスマンT氏は、
ほっそりした外観からはうかがい知れない肉好きで、
しかも内臓料理が大好きという、
筋金入りの肉食系男子です。
そのT氏が中国の吉林省に出張し、
現地で大いに歓待を受けたとのこと。
「食べ物はどうでした?」
「朝昼晩と肉でした」
「何の肉?」
「ロバとか犬とか」
「ゲー!!」
T氏が訪れた場所は北朝鮮との国境地帯で、
気温は氷点下20度。
肉と強いアルコールがなければ、
とても体が保たないそうです。
そのT氏から意外なひとこと。
「最近ホルモンが食えなくて・・・」
「何がありました?」
「日本に帰ってどん兵衛を食べて、
ああ世の中にはこんなにおいしい物があるのかと」
「あのぴんそば?」
「そうそう、ぴんそば。あれ食べてほっとして、
次の日彼女と焼肉屋へ行ったんですね」
「また肉!」
「やっぱ肉でしょ?
必須アミノ酸は肉からしか取れないんですよ。
知ってました?」
初めて聞きました。
「さかなは?」
「だめです」
「ニワトリは?」
「だめです!
必須アミノ酸は四ツ足の肉だけ!!」
ホントかなあ。
おかまいなしにT氏が続けます。
「肉焼いて、ホルモン焼いて、
あれ?ちょっと冷たいかなと。
でもまあいいやと。
生焼けのホルモン食べたらその晩熱が出て」
「下痢は?」
「ジャージャー出ました!」
典型的なウィルス性大腸炎ですね。
「それ以来ホルモンを食べたいと思わないんですよ」
去年の今頃、
京成立石の駅前で煮込みを食べたことがあります。
業界(?)で有名なその店は昼間から酔客があふれ、
一種異様な雰囲気をかもし出しています。
冷やかし半分のぼくと友人は、
明らかに場ちがいな客でした
一見(いちげん)の客が珍しいのか、
奥からじっと睨むおじさんがいて、
洞窟の奥から、
夜行性の動物に睨まれているような感じ。
ぼくと友人は背中を丸め、
ひたすら肉の切れはしをつついていました。
この店は串焼きが有名で、
何を注文したものか、
客と店主のやりとりを見ていたら、
実に不思議な会話を交わしているのですね。
「混ぜ、2本!」
「焼くの?生?」
「生で!」
「生ね!」
「レバーいち、ハツいち、生で!」
「生ね!」
生ってあなた、豚の内臓ですよこれ。
ビールじゃないんですから。
怖ろしいことに生肉が皿に乗り、
酢をかけときがらしをそえ、
そのまま運ばれていくではありませんか。
これには驚きました。
ぼくと友人は中腰になり、
次第に落ち着きをなくしていました。
スターウォーズの撮影現場に、
すっぴんでまぎれ込んだエキストラの気分です。
この話をT氏にしたら、
かれは手を叩いて喜びましたね。
「豚の生肉!
酢とときがらし!!
だめじゃん、それ!」
げらげらと笑い転げ、
「上には上ですねぇ」
としきりに感心しています。
すっかり元気が戻ったらしく、
「今度焼肉行きましょう!」
と誘ってくれました。
「いいですね。行きましょう」
エレベーターまで送ってくれて、
別れぎわにT氏のひとこと。
「必須アミノ酸、これは肉だけですから!
覚えといてくださいね」
ホントかなあ・・・
photo=c.nagase
最近出張が多く、
月のうち半分はホテルで生活をしています。
お酒は飲むし、
運動はしないし、
まことに不健康な毎日です。
これじゃいかんなあ。
よし、スポーツクラブに入ろう。
急に思い立ち、
ホテルの近所でスポーツクラブを探すことに。
しめしめ、
コナミスポーツがありました。
施設を体験利用するために、
さっそく電話で場所を確認。
「もしもし」
「もしもし」
「そちらに行きたいんですけど、
どう行けばいいですか?」
「いまどちらですか?」
「歩道橋を渡ったところです」
「いったん地下に入ってもらって、
えーB4b出口から出ていただくとすぐです」
「AB4B出口ですか?」
「えーB4b出口です」
うまく聞き取れない。
「今大久保通りにいるんですけど」
「近くにブックオフがありますか?」
「厚生年金病院と熊谷組があります」
「マクドナルドは見えますか?」
うまく話がかみ合わない。
「それは外堀通りでしょうか?」
女の子の声がくぐもった。
「一度地下に降りていただくとすぐですが・・・」
「すみません。出口をもう一度教えてください」
「えー、B4b出口です」
「A、B、よん、B出口?」
「いえ、アルファベットの、えー、B4b出口」
「B4B出口ですか?」
「そうです。B4b出口です」
ほとんど体を動かしていないのに、
妙にへとへとになりました。
「ワインの味はさっぱりわからん!」
たまちゃんはよくそういうけれど、
いいワインに出逢うと、
それはもう気持ちのいい勢いで飲み干して、
ボトルが見事に空になります。
うまいまずいはよくわかるのですね。
ということは、
この言葉はこういう意味になるはずです。
有名なワインを飲んだが味はいまいちだった。
高いワインがおいしいとはかぎらない。
ワインの値打ちがどこにあるのか、
いつまでたってもそれがわからん!
ワイングラスをふたつ並べて、
片方にボルドーの一級シャトー、
片方に安いテーブルワインを入れて、
芸能人に飲みくらべをさせるような番組がありますが、
あれけっこうな確率ではずしますよね。
値段と味が一致しない点で、
ワインほどわけのわからないものはない、
と正直ぼくもそう思います。
畑や作り手やぶどうの種類、
おまけにその年の気温や降水量など、
ワインの出来を左右する要素があまりにも多くて、
もっともらしい説明をされると、
目の前の液体が多少渋くて飲みにくくても、
何だかありがたいような気になってくるのですね。
素人の弱みにつけこんで、
強引な商売をする業者も少なくありません。
専門店の店先でデイリーワインを物色していたら、
店員がなれなれしく話しかけてくるではありませんか。
「そのワイン、『神の雫』に出たんですよ」
「は?」
「『神の雫』、亀梨和也の」
「どこで?」
問いつめると、
主人公が行きつけのワインバーで棚に並んでいた1本、
というからいい加減な話です。
POP、というのでしょうか、
ワインの商品説明のテンションが異様に高く、
ぼくは笑い転げてしまいました。
「ペトリュス(10万円以上!!)の苗木から造るメルロは、
あの超有名セレブも愛飲するほどのカルトワイン!!」
超有名セレブの名前が書かれていないところがすごい。
「あのビル・ゲイツも愛飲!!イタリア厳格評価誌・
最高5ツ星の蔵が渾身をこめて造るイタリアの代表銘酒!!」
このワインが5ツ星になったわけではなさそうです。
「カンヌ沖サントノラ島で修道士たちが造る超自然派ピノノワールは、
『神しか飲むことは許されていない』幻の逸品!!」
ほとんど意味がわかりません。
「有名シャトーの1/2の収穫量!!奇跡のグランヴァン、
しかもオールドヴィンテージ!!
まるでシュヴァル・ブランのような完成度!?」
!?が渋いですよね。
これ他の業界でやったら大問題です。
「あのボブ・ディランと同じギターで演奏!!」
「スティービー・ワンダーそっくりのメロディライン!!」
「ビヨンセの妹がマンドリンで参加!!」
うーむ、かえって売れなさそうな気がする。
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写真は蛯乃木ユウイチおすすめのワイン
「リンデマン BIN 45 カベルネソービニョン」です。
価格 1,380円(税込1,449円)
輸入元 サントリー
バランスがよく、表情が豊かなオーストラリアワイン。
手に入りやすさも◎。
麺類で何が好きかと聞かれたら、
つい蕎麦だとか、
パスタだとか答えてしまいます。
本当はラーメンを食べる回数が一番多いのですが、
「ラーメン!」
などといおうものならバカ丸出しのような気がして、
思わず格好をつけてしまうのですね。
蕎麦は洗練されているし、
パスタはお洒落。
そう思い込んでいること自体、
どうしようもなく頭が悪いのですが。
食べ物の話はイタリアンに持ち込むのが安全ですね。
とくに女の子が相手のときは。
じゃあ何か食べに行こうとなったとき、
ラーメン屋じゃ間が持ちませんからね。
ましてうどん屋など。
うどん!!
なぜか不当な扱いを受ける麺類の王。
ぼく自身その真価を見誤っていたし、
世間の人々も冷たかったような気がします。
名前がよくないのでしょうか。
「愚鈍!」
と聞こえてしまう悲しさ。
「胡乱(うろん)な奴」
と罵られることも。
色眼鏡をはずして向き合えば、
これほど魅力的な食材も珍しいのに。
袋に入って一玉28円。
あの白いかたまりを「うどん」と呼んだ瞬間から、
ぼくたちはうどんの本質を見失ったのです、きっと。
さぬきうどんが全国を席巻して以来、
各地にすぐれたうどん屋が誕生しました。
雪女と見まがう白い肌、
鋭い輪郭、
ひんやりとした外観からは想像もつかない性格の激しさ。
志の高い職人が打ったうどんは、
留め金の外れたワイヤーロープのように口の中で暴れます。
それはもう噛むという行為を離れて、
うどんと人間が互いに向き合い、
おのれの全存在を賭けて戦う、
ひとつの真剣勝負なのです。
一皿のうどんを片づけたとき、
思わずこうつぶやくことはありませんか。
「勝った!」
うどんが麺類の原点であり、
頂点であることを、
日本人は久しく忘れていました。
遠い昔、
長安に渡った僧空海が、
かの地で打ったさぬきうどんが中国全土に広がり、
それが「麺(ミェン)」と呼ばれるようになり、
シルクロードに子孫を残し、
ヨーロッパに到達してパスタとなった歴史を、
もう一度思い出すべきときが来たのかもしれません(嘘)
ソウルやファンクやヒップホップが、
すべて4ビートから生まれたように、
あらゆる麺類の祖先はさぬきうどんだったのではないか、
とぼくは想像します。
(だからといって4ビートは、
ファンクの代わりにはならないのですが)
たとえば飯田橋の「雅楽」でせいろをたぐると、
なぜか掃き清められた神社の境内が心に浮かびます。
「うどんの中のうどん雅楽」(長くても全部屋号です)のお品書きには、
墨で挑戦状と記されていて、
客をふるえ上がらせますが、
長い不遇の季節を思えば、
それもやむなし。
魂の叫びです。
おのれの無知と偏見を詫びながらすするうどんの食感は、
決して被虐的なものではなく、
蒙(もう)を啓(ひら)かれる喜びに満ちていて、
心身が洗われるような気がします。
デートのときにうどん屋に連れて行かれたら、
それは手抜きではないと思います。
「さぬき」だけに。
photo=上から「雅楽」のちょうちん、 明治神宮北参道、お品書き (by蛯乃木ユウイチ)
すっかり日が長くなりました。
高山寺には両親の墓があるので、
月に一度はお参りをするのですが、
墓参りのたびに、
少しずつ動いていく季節を、
肌で感じることになります。
しだれ梅が可憐な花をつけ、
貝殻のかたちの花弁を地面に散らしたり、
桜の蕾がふくらんで、
バルタン星人のはさみのかたちに見えたり、
思いがけない発見があります。
音も豊かですね、春は。
せわしなく小鳥が鳴きながら、
枝から枝へと移る気配。
鳥と一口にいうけれど、
小さなものと大きなものでは、
体格に10倍くらいの差がありますね。
人間の場合、
身長10メートルの人はいませんから、
同じ縄張り争いをしても、
鳥の世界は過酷だろうな、
と想像したり。
次から次へと浮かぶ妄想を、
鉄橋を渡る電車の音がかき消して、
魂が肉体に戻ってきました。
いつのまにか太陽が大きく傾いて、
多宝塔の漆喰を山吹色に染めていました。
あらゆるものの影が長くて、
振り向くと巨人が立っていそうです。
ふと目をやると、
東の空に白い月。
少しいびつな満月が味わい深くて、
デジタルカメラを取り出しました。
太陽と月と地球。
三つの天体が今この瞬間、
絶妙のバランスで釣り合ったのでしょうね。
天空を支配する力が、
目の前に壮大なパノラマを描き出す不思議。
多宝塔にかかる夕月は、
牛尾武さんの絵のようでした。
photo=蛯乃木ユウイチ
ふたつの新聞を見比べてください。
ほとんど同じに見えますが、
右が2月6日付産経新聞近畿版、
左が2月7日付同紙九州版、
ともに朝刊です。
わざわざ断らなければならないくらい、
ふたつの新聞はそっくりです。
所用で福岡に一泊することになり、
西鉄系列のホテルを利用しました。
チェックインするとき、
朝刊は何がよいかと聞かれ、
産経新聞をリクエストしました。
余談になりますが、
この新聞、
実に面白いのです。
もともとマイナーな新聞なので、
あちこちに気兼ねをする必要がないらしく、、
思い切ったことがずばりと書ける。
ご苦労なことに、
ぼくは毎朝全国紙4紙に目を通すのですが、
各紙一長一短があるにしても、
妙にいい子ぶらない点で、
産経が一番面白かったりします。
それはさておき。
朝刊をめくりながら、
ぼくは異様な感覚におそわれていました。
どの記事も、
どこかで読んだ気がするのです。
既視感というには余りにも生々しい手ごたえ。
コラムを読んでも、
社説を読んでも、
それどころかニュースの細部にいたるまで、
そこに何が書かれてあるか、
ぼくはすでに知っているのです。
川端康成が愛用した文台も、
ハイブリッド車の開発競争も、
スポーツの結果も、
連合赤軍のレポートも何もかも。
自分は気が狂ったのだろうか。
めまいを通り越して、
吐き気がしました。
「七瀬ふたたび」の登場人物の不安が、
初めて自分のものになりました。
超能力に目覚めてしまったぼくは、
巨大な権力に追われて生きることになるのでしょうか。
あの七瀬のように。
さいわいぼくは超能力者でも何でもなく、
福岡から持ち帰った新聞と前日の新聞を照合したものが、
ご覧の通り、
上の写真です。
2月6日の近畿版のニュースを一部差し替え、
これが何と2月7日の朝刊として流通しているのです、
九州では。
知らなかった!
ということは、
ぼくたちが今朝刊だと思って読んでいるものは、
さらに前日の新聞だった可能性もあるわけです。
そういえば去年、
木田元が日経新聞に半年間コラムを連載するというので、
毎日紙面に顔をくっつけて、
舐めまわすようにさがしたけれども、
ついにそのコラムを発見することはありませんでした。
あるんですねぇ、
情報格差が。
インターネットの時代なのだから、
紙媒体の使命は速度ではないよ、
といわれてしまえばそれまでなのですが、
木田元のコラムが読めなかったことは、
今もって納得がいきません。
新聞に顔をくっつけたせいで、
近視の度が思いきり昂進したのですから。
ぼくは大体メロディが先にできてしまうので、
うたづくりの最終行程は、
「ハメコミ」と呼ばれる作詞作業に費やされることになります。
永遠に解けないパズルを解くようで、
毎回七転八倒するのですが、
何かの拍子に「するり」と解けることがあって、
そのこつを思い出すために音楽を聴いたり、
本を読んだり、
街をほっつき歩いたり、
それはもう涙ぐましい努力をすることになります。
そんなときエネルギーをくれる先達の一人が、
たとえば歌人の穂村弘です。
俳句や短歌は、
言語芸術のきわみのようなところがあって、
ひとつの歌の中に、
日本語の様式美と同時代の気分が高気圧で閉じ込められているので、
栓を抜いたとたん、
思いがけないリアリティが飛び出してくることがあります。
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
穂村弘の出世作となったこの作品は、
雪の情景を描いて余すところがありません。
俳句にしても、
短歌にしても、
かぎられた文字数の中に世界を凝縮するために、
実にさまざまな技法が開発されてきました。
手練手管の宝庫というべきものがあり、
これがどうもうたづくりに役立つみたいです。
「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
本当のおかっぱにって何回も云ったのに、意気地なしの床屋め
はい、と頷いて、しばらく考える、イエーイのほうがよかったかしら
穂村弘が描く登場人物は、
世界を乱反射するミラーボールのようです。
キャラクターが立っているので、
置かれたシチュエーションにぴたりとはまれば、
生々しいリアリティが生まれます。
うたという表現形式は、
意外に類型的な人間関係しか描けないもので、
そこを脱却するために、
とげのある言葉を用意したり、
小道具に凝ったり、
あれこれいじくりまわすことになるのですが、
それは船の積荷を変えているだけであって、
表現の構造そのものが変化するわけではありません。
キャラクターとシチュエーション。
これしかないよなあ、
と思いはじめたとき、
ふと目にした穂村作品は大変魅力的でした。
ああこの人には見えている。
そんな気がしましたね。
最後にもう一首、
冬の情景を選んでみました。
見事としかいいようのない穂村ワールド。
目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき
photo=梅畑の雪(c.nagase)
JALの関係者はこの「ほんまかい通信」を読んでいますね、きっと。
というのも、
2週連続で飛行機が欠航になったのですが、
今回はキャンセルの手順が実にあざやかでした。
誰にも文句はいわせない、
不退転の決意を感じました。
当ブログを片手にリスクマネジメントの勉強をしたのではないか、
とぼくはにらんでいます。
1月30日(金)、JAL1385便。
東京羽田~南紀白浜。
定刻17時30分。
先々週は17時30分に欠航を表示し、
ぼくたちをあわてさせましたが、
先週はスキを見せませんでした。
10時11分にJALからメールが入り、
何事かと開いたら、
条件付き運航のお知らせでした。
南紀白浜空港が雨のため、
引き返す可能性があるというのです。
あわてて地元の関係者に問い合わせたら、
現地は小雨。
まず引き返すことはないでしょうとのこと。
それはよかった。
胸をなでおろして電話を切り、
そのことはすっかり忘れていました。
池袋の横丁で塩ラーメンを食べ、
打ち合わせを1本済ませ、
東急ハンズで洗剤を買い、
西武百貨店でソーセージを買い、
ジュンク堂でトルーマン・カポーティと永井龍男を買い、
山手線の液晶画面で星占いを見ていたら、
突然ケータイが鳴りました。
前述の友人からです。
さすがに悪い予感がしましたね。
「申し訳ありません。1385便が欠航になりました」
嘘でしょう?
時計を見ると16時です。
いくら何でも決断が早すぎませんか。
「理由は?」
「雨です」
「いま降ってます?」
「小降りです」
「霧は?」
「出てません」
やられた、
と思いましたね。
本当に飛ぶ意志があれば、
ぎりぎりまで判断を遅らせるし、
多少条件が悪くても、
雲の上で着陸のタイミングを待つものです。
木村拓也がパイロットを演じたほれ、
あの番組を見なかったのでしょうか。
午前中に配信されたメールは、
欠航の予防注射だったのですね。
ここまで周到にやられたら、
たしかに文句をいう気が失せます。
ひとつ難をあげるとすれば、
欠航の発表があまりにも早すぎたこと。
90分前ですからね。
最初からキャンセルするつもりだったのではないかと、
勘ぐりたくもなります。
仕方がないので東京駅で乗り換え、
新幹線経由で帰ってきました。
6時間かかりました。
車中で永井龍男の短編集を読み終え、
これはこれで貴重な体験だったと思えるのですから、
文学の力とは怖しいものですね。
日本語の奥座敷を見せられたような気がします。
その部屋の襖を開けるのは、
その日が初めてのことでした。
それにしても、
2週続けて週末便が欠航になるとは!
たまたまそこに居合わせる、
自分の運の悪さが嫌になります。
日頃の行いに、
何か問題があるとしか思えません。
思い当たるフシが多すぎて、
頭を抱えそうになります。
そういえば木村拓也のあの番組、
「GOOD LUCK!!」というタイトルでした。
皮肉なタイトルでは、
あーりませんか。
photo=南紀白浜空港(c.nagase)